インスタントコーヒーの楽しみ方HOW TO ENJOY COFFEE

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インスタントコーヒーは未踏ルートに挑み山から生きて帰るための選択

インスタントコーヒーは未踏ルートに挑み
山から生きて帰るための選択
アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん

常人が目にできない山々の景色を、独自の技法による撮影で切り取る平出和也さん。未踏峰・未踏ルートにこだわる登はんと高く評価され、日本人初となる『第17回ピオレドール』(2009年)などの受賞歴も多数あります。大学時代に山と出会い挑戦し続ける平出さんの荷物に入っているのはインスタントコーヒー。それは、厳しい登はんを支える選択肢のひとつでした。

Interview

アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん

インスタントコーヒーを持参するのは、どんな理由からでしょうか?

平出まずは荷物の軽量化のためですね。以前はビニール袋にインスタントコーヒー、砂糖、ミルクパウダーを小分けにしていましたが、いまはスティックの加糖タイプを持っていきます。山では水分を摂ることが重要で、スティックタイプは軽量でありながら糖分も摂れてエネルギーになるのもあって重宝していますよ。

アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん

登はん中は、かなり水分補給が重要になるのですね。

平出そうですね。その重要性を痛感したのは、2005年にシブリンの未踏ルート(6543m/インド)を登はんしていたとき。滑落を心配して登はん道具を多く、燃料や食料は少ない装備にしたら途中でガスカートリッジがなくなり、雪を溶かして水を作ることができなくなりました。酸素が薄い高所では、水分摂取量が足りなくなると血液がドロドロになり循環しなくなりますからね。水分を摂れなかったことで足指が凍傷になり、3本の指を失いました。これを教訓として、以降は必要な道具、食料や燃料のバランスをより考えるようになりました。もっとも、荷造りは机の上で登る山を選んでいるときからはじまります。はじめて行く未踏ルートでも、どう登るかをイメージできれば、生きて帰るために必要最低限で、もっとも軽量な荷物で登はんできますからね。

そこまで荷物の軽量化をはかりながらも、コーヒーを外さないのは、どんな理由からですか?

平出家にいる時は朝、必ずコーヒーを飲んでいることも理由ですね。インスタントコーヒーではなく、エスプレッソやフレンチプレスやドリップなど、様々な種類のコーヒーを豆から挽いているんですけど……だから山にインスタントコーヒーを持っていくんです。というのも、山でインスタントコーヒーを飲むのは、テントを張って1日を無事に終えて、明日どうするか──そんなことを考える食事終わり。登はん中なので気も張っていますし、ストレスもかかっています。そこで、テントを閉めて外の情報を遮断した場所で日常的に慣れ親しんでいるインスタントコーヒーを飲んで気持ちをリセットします。ここでリセットできなければ、パフォーマンスが下がってしまいますからね。

アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん

水分摂取とメンタル面の実用性があるのは平出さんならではのたしなみ方ですが、そもそもコーヒーを好きになったきっかけを教えてください。

平出いつの頃からか自然とですね。登はんしてきたパートナーがコーヒー好きだったからかもしれません。そんなこともあって、シビアな山ではインスタントコーヒーを飲んでいますが、荷物の軽量化をしてもコーヒーを持っていかない選択はありません。世界で誰も入ったことのない領域での冒険を言葉と映像で伝え続けるためにも、インスタントコーヒーは欠かせない存在です。

Afterword

アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん
インスタントコーヒーを飲むため、ベースキャンプではコップを使いますが、荷物を1gでも減らしたい登はん中は食べ終わったごはんなどのレトルトパウチの袋を利用しています。
アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん
テントを張る場所は安全ですが、平地ではありません。かなり傾斜がきつい場所になるため、ガスバーナーも下に置けないので、テント内で吊るして使用できるように紐をつけています。
アルパインクライマー・山岳カメラマン 平出和也さん

Profile平出和也さん

長野県出身。高校から大学2年生まで競歩の選手として全国大会で活躍し、大学2年生から山岳部に所属。2001年、未踏峰クーラカンリ東峰(7381m/チベット)の初登頂により『日本スポーツ賞』をはじめ、『ピオレドール賞』(2009年、2018年)、『植村直己冒険賞』(2017年)など受賞歴多数。三浦雄一郎氏の80歳でのエベレスト登頂、田中陽希氏の“日本百名山一筆書き”などに参加、「僕にしか同行できない場所」で撮られる映像群は、世界的にも評価が高い。

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